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読んだ本の感想あれこれ。
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発行年月:2014年6月


 いびつでもかなしくても生きてゆく

『ラブレス』『ホテルローヤル』の桜木ワールドを凝縮。
直木賞作家による珠玉の作品集


奔放な実の母親とも、二度目の結婚でさずかった実の娘とも生き別れ、昭和から平成へと移りゆく時代に北の大地を彷徨った、塚本千春という女。その数奇な生と性、千春とかかわった人々の哀歓を、研ぎ澄まされた筆致で浮き彫りにする九つの物語。桜木紫乃の真骨頂がここにある!

                      (実業之日本社HPより)



ひとりワルツ

つとめ先のスナックに時折現れる優男・ヤマさんに、咲子はひそかに思いを寄せている。
中学生になった娘の千春と再会を控えた咲子を、ヤマさんはデートに誘う。

渚のひと
医大に通う息子が帰省する。
久々に家族三人で囲む食卓の準備で内職を早めに切り上げた育子。
隣家の千春は、息子が卒業した高校の後輩にあたるのだが……

隠れ家
ススキノの踊り子・麗香は、兄が帰ってきたら舞台を去ると決めていた。
その夜、8年ぶりに兄が姿を現した。

月見坂
晴彦は高齢の母親と二人暮らしだ。
商品の苦情を述べた母への謝罪に訪れたスーパーの配達係の女性を見て、晴彦は……

トリコロール
小さな港町で所帯を持って25年。桐子は夫とふたり、理髪店を営んでいる。
ひとり息子は家業を継がずに街をはなれている。

逃げてきました
市役所勤務のかたわら、詩作をつづけてきた巴五郎。
彼が主宰する詩作教室に、塚本千春という30代の女が入会してきた。

冬向日葵
罪を犯し、逃げ続けて何年になるだろう――。
能登忠治が道北の小さな一杯飲み屋の女将、咲子と暮らして8年が過ぎた。

案山子
東京から北海道・十勝に移住、独りで野中の一軒家に暮らす
元編集者・河野保徳の前に現れたのは……

やや子
図書館司書の田上やや子は、交際半年の恋人に乞われ、彼の母親と会っている。
内心、彼と別れようと考えているやや子だったが……



短編連作集でした。
「塚本千春」がどの話にも関わって来ました。

最初の話<ひとりワルツ>では、千春の母親・咲子の語り。
千春中学1年生で、咲子から離れ祖母と暮らしてる。
次の<渚のひと>で千春は高校生。
その後、成人した千春は、次々に男の人と出会い、関係を持ち、結婚もするが
離婚もして再び、別の男と出会い、子どもは一人女の子を産む。
その子の名前は、やや子。
最後の話で、やや子が短大を卒業し、立派な社会人として働いている姿が
出てきて、なんだか嬉しかった。
それまでの千春の生き様は、なんだか暗くて重たい感じだったので。
やや子の父親のその後の人生も幸せだった様子で、最後には、なんとなく
ホッとできる情報が知れて良かった。


次はどうなる?と読ませる力は、やはり流石です!


                            ★★★★

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発行年月:2013年10月


 「東京に逃げることにしたの」道立湿原高校卒業から二年、図書部の仲間だった順子から深夜に電話がかかってきた。二十も年上の職人と駆け落ちすると聞き、清美は言葉を失う。故郷を捨て、極貧の生活を“幸せ”と言う順子に、悩みや孤独を抱え、北の大地でもがきながら生きる元部員たちは、強烈に引き寄せられていく-----。

                       (双葉社HPより)


北海道の高校で同級生だった人やその関係者が1章ごとに語り手となり進む。
そして、それぞれの話のなかに度々登場するのが順子。
全体を通して、暗いかんじ。
これは前作の『ホテルローヤル』に似た雰囲気でした。
けれど、彼女たちの一生懸命に、それぞれの人生を生きている姿は力強いものを感じた。



<1984 清美>
高校を卒業して地元ホテルに就職。
営業社員として働くが、仕事は楽しくないことばかり。
ある日、高校時代の同級生・順子から、妻子持ちの男と東京に駆け落ちすることに
したと連絡を受け驚く。


<1990 桃子>
カーフェリー「シーラブ号」の乗務員として働く。
1年の2/3は海の上。
海の上だけの恋人・直樹は妻子持ちで同じ乗務員。
休みの日、東京の順子に会いに行く。
順子はラーメン屋を営む夫と幼い息子と暮らしていた。


<1993 弥生>
高校を卒業したばかりの若い従業員と夫に駆け落ちされた。
父から受け継いだ創業80年の老舗の和菓子屋を今は一人で営んでいる。
夫は東京にいるらしい。
離婚もせず、出奔したままの状況を変えるため、夫に会いに行く。


<2000 美菜子>
35歳で同じ職場の教師と結婚することに。
相手は高校時代の教師・谷川。
谷川は美菜子が高校生時代、同級生の順子から告白された経験がある。


<2005 静江>
東京に好きな人と出て行った娘の順子に会いに行く。
初めて会う孫の輝(あきら)は、国立大の工学部で学んでいるという。


<2009 直子>
看護師として働いている。
東京で暮らす同級生の順子が病で先が長くないと知り、会いにいく。



6人の女性たちの話をバラバラに読みながら、常にそこにある順子の存在が
気になってくる。
この物語の主人公は順子でしょうね。
高校を卒業して、和菓子屋に就職し、そこの菓子職人である男と東京に出て
二人で古い店舗を受け継ぎ、ラーメン屋を始める。
息子が生まれ、その息子も立派に成長し、最後は余命短い病に倒れてしまったけれど
幸せな時間は、きっと多かったんだろうな~。

駆け落ちされた側の和菓子屋の女主人・弥生が格好よかったなぁ~。
夫に会いに行き、どうなる?と思ったけれど・・・
「わたしも幸せになる。あなたも体に気をつけてね」と言葉をかけて去っていく。


ホテルローヤルよりもこちらの作品の方が、わたしは好きだな。


                          ★★★★★






発行年月:2013年7月


知らないままでいられたら、気づかないままだったら、どんなに幸福だっただろう――。

革命児と称される若手図書館長、中途半端な才能に苦悩しながらも半身が不自由な母と同居する書道家と養護教諭の妻。悪意も邪気もない「子どものような」純香がこの街に来た瞬間から、大人たちが心の奥に隠していた「嫉妬」の芽が顔をのぞかせる──。いま最も注目される著者が満を持して放つ、繊細で強烈な本格長篇。

                     (新潮社HPより)


登場人物たちの心理描写が巧い!!

書道家の秋津龍生は、大きな章を今だ獲得せず、高校の養護教諭である妻・怜子に
経済的に頼る日々。
そして半身不随で痴呆が進む母親を自宅で介護する。


林原信輝は図書館館長。
祖母の元で生活していた妹の純香(25歳)を最近、引き取り一緒に暮らし始めた。
純香は知的障害があり物事の判断が一人では出来ないが
唯一の能力が書道。
どんな書でもそっくりに真似て書くことが出来る。
が・・そんな真似をしたときには×をそこに書くことを祖母から約束されていた。


そして、書道家である秋津の個展に出向いた純香が秋津と出会う。
秋津に対して物怖じせず、自分の書を見ての意見を述べる純香に興味を覚える秋津。

そして、養護教諭の怜子の学校に講演で訪れた信輝。


秋津夫妻と林原兄妹・・・・2組の男女が知り合い、接近していく。
そんななかで生まれていくそれぞれの感情。

嫉妬芯だったり猜疑心だったり、好奇心だったり・・・・

取り繕う顔の下に隠された人の本音や気持ちの葛藤が巧く表現されていて
巧い!!と思う。
そんななか、心身共に無垢な純香の言葉が新鮮でした!
無垢ゆえに他者を追い詰め自身が傷ついてしまったのは哀しかった・・・(/_;)

養護教諭の仕事上での関わる女子生徒・君島との話も衝撃的でした。


色々な要素が織り込まれているのに、巧くそれらが結びついて
驚きのラスト!

もう理想的な物語の展開です!!

すごい作家さんだと思います!!
今後の作品も期待します!!


                         ★★★★★


41q9RekpLpL__SL500_AA300_.jpg 発行年月:2013年1月


ホテルだけが知っている、やわらかな孤独
湿原を背に建つ北国のラブホテル。訪れる客、経営者の家族、従業員はそれぞれに問題を抱えていた。閉塞感のある日常の中、男と女が心をも裸に互いを求める一瞬。そのかけがえなさを瑞々しく描く。


                   (集英社HPより)




ラブホテル「ホテルロ-ヤル」に関わる人々の話が短編7編で綴られます。
ラブホテルが舞台なので・・・そういう場面もありますが・・・・いやらしい感じは不思議とせず
そこには、なんとも言えない哀愁が漂っています。


最後の話「ギフト」は、ホテルの出来るまでの話。
ホテルを建てた田中大吉は、今は入院中。
娘の雅代がホテル経営を引き継いだ。
前の話、雅代が語る「えっち屋」と一緒に読むと、ホテル経営の家族の物語がはっきりわかる。

父・大吉は、母・るり子とは再婚。
娘の雅代は、両親が結婚するまえに出来た子ども。
しかし、雅代が高校卒業後すぐに母は家を出て行った。
噂では、ホテルに出入りしていた飲料水メ-カ-の男性と一緒とか。


最後の「ギフト」では、ホテル経営を始める前の大吉とるり子は仲睦まじかったんだと
知れたのは、ちょっとホッとしたところ。

全体を通して、切なくて暗いかんじが漂っていて・・・・決して読んでいて楽しくはないんだけれど
桜木さんの書く物語は、何か惹かれるものがある。


ホテル廃業後の雅代の生活が気になるなぁ~。
るり子のその後も気になるし・・・・。

続編はないのかな?


★★★★

a68eed85.jpeg発行年月:2012年4月

きて行きさえすれば、いいことがある。

笹野真理子が函館の神父・角田吾朗から「竹原基樹の納骨式に出席してほしい」という手紙を受け取ったのは、先月のことだった。十年前、国内最大手の化粧品会社華清堂で幹部を約束されていた竹原は、突然会社を辞め、東京を引き払った。当時深い仲だった真理子には、何の説明もなかった。竹原は、自分が亡くなったあとのために戸籍謄本を、三ヶ月ごとに取り直しながら暮らしていたという――(「かたちないもの」)。
 道報新聞釧路支社の新人記者・山岸里和は、釧路西港の防波堤で石崎という男と知り合う。石崎は六十歳の一人暮らし、現在失業中だという。「西港防波堤で釣り人転落死」の一報が入ったのは、九月初めのことだった。亡くなったのは和田博嗣、六十歳。住んでいたアパートのちゃぶ台には、里和の名刺が置かれていた――(海鳥の行方」)。


 雑誌「STORY BOX」掲載した全六話で構成しています。


                                          (小学館HPより)


6編の短編集。
「かたちないもの」
「海鳥の行方」
「起終点駅」
「スクラップ・ロ-ド」
「たたかいにやぶれて咲けよ」
「潮風の家」
それぞれ違う話だけれど、二番目の話「海鳥の行方」と「たたかいにやぶれて咲けよ」は
主人公は同じで新聞記者の山岸里和が取材先で出会った人との話。


どの話も重いものがあり、平穏な暮らしのなかに大きなものを抱えている人たちの話。
切ない気持ちにもなる。
でも残された者は、その人のことを生涯忘れずに前を向いて進む。
いろいろ考えてしまった。

特に印象的だったのは、「スクラップ・ロ-ド」かな?
早すぎた出世を妬まれ、嫌がらせに耐え切れず銀行を自主退社した男。
偶然、粗大ゴミをあさっている男女を目にする。
男は、幼い自分と母親を捨てた父親だった。
この話のラストは、なんとも切なかったなぁ~(/_;)
男の父親の最期が哀し過ぎる。
けれど、そんな父の最期を受け止めて男は奮起するのかな?・・・して欲しい!!


桜木さんの物語は、ちょっと暗いかんじが多いけど、じ~んと来るものがあるな。


                                         ★★★★

 


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