どこからも遠い<世界の果て>にある小さな食堂の話を
書きあぐね、私が遭遇する謎めいて懐かしい人たち。
世界中のホテルを渡り歩く幻のイギリス人作家、
白鯨の幻影にとらわれた詩人、ジョン・レノンを待たせた男、
映画の予告編を作ることを夢見る青年、レインコ-ト博物館と
閑人カフェ・・・・物語の鍵はビ-トルズのホワイトアルバム。
(本の帯文より)
16の短編からなる物語。
ひとつひとつの話は、それで完結だけれど、<世界の果て>にある小さな食堂の物語を
書こうとしている、作家の吉田が全て関わっている。
物語のひとつひとつが物語のなかの作家・吉田の作品?彼の経験?
どの話もいいのです。
好きだなぁ~。このことば運び・・・ホレボレ。
1962年生まれだから同い年。
だから、短編のなかで、子どもの頃を思い出して書かれたであろう「ピザを水平に持って帰った日」は、同様の思い出があり、なんだか共感しまくりでした!!
わたしもピザを始めて食べたのは10歳くらいだったなぁ~。
別々の話なのに、何処かで繋がっている。
ビ-トルズのホワイトアルバムを知らないのが、ちょっと残念だったけど・・・
聞いてみたくなった。
そして、フィンガ-ボウル・・・これもなんだか懐かしい単語。
高校生のテ-ブルマナ-教室で、フィンガ-ボウルは食事中、汚れた手を洗う水が入っていると教わったけれど・・・・大人になって、レストランでそれが置いてあった記憶はない。
読んでいる間中、なんだか愉快な気分にさせてくれる吉田氏の本は大好き♪
五十歳になった私は、ある日、訪れた美術館で
展示中の「受胎告知」の世界に迷い込んでしまう。
現実と絵の中がまじりあい、描かれたものたちの声が
立ちあがる、試みにみちた長編小説。
(中央公論新社HPより)
またまた不思議な物語でした。
でも、読み終えるのが惜しいと思える読んでいて心地よい物語でした。
大学で学生に芸術を論じる先生の私が体験する物語。
助手のイノウエくんを「アノウエくん」と呼ぶ。
先生の最初の不思議体験は、上野の美術館で「受胎告知」を見ているとき・・・
絵に吸い込まれるように・・・と思ったら次の瞬間には、絵の中に入り込んでしまった!
そして、自然と再び元の世界へ。
そして、次は、アノウエくんの家を訪ねて行き、そこでアノウエくんが一番大切にしているという絵画のポスタ-「クリスチ-ナの世界」の中へ。
次はビルの11階でひっそり営まれている美術館に足を運び、「風神雷神図」の中へ。
その後も銭湯の富士山の絵の中、坊主が屏風に上手に描いた絵の中へ・・・。
どうして絵の中に入ってしまうのか?なぜまた戻って来られるのか?
アノウエくんとあれこれ意見を交わす様子も可笑しい。
先生は50歳だから、ほぼ自分と同じ年代なんだけど、「50歳の男は世の中から疎外されている」と感じる気持ちはよくわからないけど、説明されれば、なるほど~と思わず唸ってしまった!
凄いところに気づくな・・・笑
エッセイのような書物が多いけど、長編も面白いので、また是非、長編を書いて欲しいなぁ~。
★★★★★
月光を売る怪人、小さな音楽をつくる才人、
沈黙する先生、時間の管理人、コルクレスキュ-隊、
そして、チョッキのメニュ-を差し出す料理人。
笑いあり、涙なし、ときどきほんの少しだけしんみり。
いま、語り明かされる、
知られざる「わたくし」たちの物語。
(本の帯文より)
あ~楽しい♪
なんてセンスの良い本なんだ!
毎回、驚かされるクラフト・エヴィング商會の本。
18の世間であまり知られていないお仕事が登場。
その仕事人の顔写真も一緒に。仕事に使われる道具や関連のものたちの写真も綺麗。
最初は架空の仕事でしょ?と思っても
もしかして、実際にあるのかな?なんて思ってしまう巧妙な細工。
出てくる仕事人の顔を知らないので途中まで半信半疑のままでしたが・・・
後半に差し掛かったあたりで、作家の小川洋子さんのお顔が出てきて、この本の趣旨がちょっとわかって一人にんまり。
小川さんは「冷水塔守」に、成りきっていた!
手に持ったコップの水が冷たそう。
でも、一番素敵なのは、最後の「シチュ-当番」かな?
本好きの人なら、一度は訪ねてみたい「冬眠図書館」。
夜の8時開館で朝の8時まで。
そこで出されるコ-ヒ-とパンとシチュ-。
森に囲まれた図書館の外のテラスで貸し出されたブランケットに包まれての読書。
あ~想像するだけでワクワクする!
最後のじつは、わたくし本当はこういうものです
も興味深く読みました。
本当の職業が写真とともに載っていて・・・
みんなで楽しみながら作った本なんだなぁ~。
こういう素敵な人間関係もいいな。
まだ未読の作品も探して読んでみよう♪
サンドイッチ屋「トロワ」で働くことになったぼくは、オリジナルのスープを考案することに……。個性あふれる登場人物とのほのぼのとした交流、往年のわき役映画女優“あおいさん”へのほのかな憧れと出会い。みんなの心の中にある“なつかしい町”を舞台に繰り広げられる、心優しい物語。
(暮らしの手帖社HPより)
先に読んだ「つむじ風食堂の夜」が、素敵で、続けて読んでみました。
同じ月舟町が舞台になっていて、けれどここには、映画館とサンドイッチ屋さんが主に登場。
主人公のオオリ(大里)は、仕事を辞め、月舟町に越してきた。
そして、アパ-トを借りて住む。
前の「つむじ風・・・」の主人公と似てるけど、また別のアパ-トかな?
大家さんはその名も「オ-ヤ」だと言い、オオリのことを「オ-リィ」とおしゃれに呼ぶ。
なので、オオリも密かに大家さんのことを「マダム」と呼ぶことにする。
近所にある商店街のサンドイッチ屋さんが人気らしい。
多くの人がお店の袋「3」と書かれた袋を抱えて通り過ぎる。
なぜ「3」?と思ったら、お店の名前が「トロワ」だという。
なるほど、フランス語の「3」=トロワね・・・。
そして店主は日本人男性で「安藤」。
なぜ「トロワ」と付けたのかの理由を聞いて・・・・・・すごい!!なるほど~!!
このセンスには脱帽です♪
そして、そのサンドイッチ屋さんの息子・リツ君が可愛い。
小学4年生にしては、お利口で話口調が丁寧。礼儀正しい子。
そして、隣の駅にある映画館に通い同じ古い映画を何度も鑑賞するオオリ。
そして映画館内で出会う、緑色の帽子をいつも被っているご婦人。
出会う人たちと次々、素敵な縁を作っていくオオリの日常が楽しい。
文章も綺麗で、本当に癒される。
吉田さんの書く物語は素敵だ!
イラストの佃 二葉さんの絵もとっても素敵で、ぺ-ジを捲って、イラストがあると嬉しかった♪
これはお薦め度100%の本!!
中学生の次女も「読みやすくてすごく良かったよ!」と申してました。
★★★★★
食堂は、十字路の角にぽつんとひとつ灯をともしていた。私がこの町に越してきてからずっとそのようにしてあり、今もそのようにしてある。十字路には、東西南北あちらこちらから風が吹きつのるので、いつでも、つむじ風がひとつ、くるりと廻っていた。くるりと廻って、都会の隅に吹きだまる砂粒を舞い上げ、そいつをまた、鋭くはじき返すようにして食堂の暖簾がはためいていた。暖簾に名はない。舞台は懐かしい町「月舟町」。クラフト・エヴィング商会の物語作家による書き下ろし小説。
(筑摩書房HPより)
クラフト・エヴィング商会の本を数冊、読んでどれも面白かったので、その物語作家である吉田篤弘さんの小説が読みたくなり、読んでみました。
たしか・・・映画化されているような・・・。
表題に聞き覚えがあったので、まずはこれを選んだ次第。
つむじ風が巻き起こる十字路の角にある食堂。
名前は特にないけれど・・・・いつしか常連さんから「つむじ風食堂」と呼ばれるようになる。
開店時間は夜の6時。そして深夜2時くらいまでが営業時間。
常連さんたちが個性的で楽しい。
皆、近所に住まう人たち。
主人公の私は・・・月舟アパ-トの七階に住み、人工降雨の研究をしているので皆からは「先生」と呼ばれている。
最近、引っ越して来て、つむじ風食堂に入ったところ、気に入り、常連客の一人になる。
帽子屋の桜田さんから、二重空間移動装置を譲り受けたり、
古本屋ではなんとも奇妙な「唐辛子千夜一夜奇譚」を見つけ、店の主からは300万円で売ると言われ・・・・
果物屋の青年とは宇宙や哲学的な話を楽しみ・・・・
ほかにも舞台女優の奈々津さんとの関わり、かつて父親に連れられて行った懐かしい喫茶店の二代目店主との再会など、登場する人物たちと主人公の「私」の会話が全部、ほんわかするかんじ。
読んでいて、とても心地よい、大人のための童話のような物語でした。
映画化された作品も見てみたくなった!
好きだな~こういう話♪
★★★★★
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記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;