発行年月:2023年11月
(文藝春秋HPより)
黒蟹県は架空の県だけれど、巻頭に地図が載っているので、読みながらその
地図を眺めて風景を想像。
最初の話は、仕事で黒蟹営業所に異動で引っ越してきた三ケ日 凡(なみ)の話。
退職する雉倉が引き継ぎとして、取引先へ挨拶がてら周辺地域を車で廻り
土地のことなどを教わる。
話は連作で、前に出てきた人も再登場したりして、楽しい。
そして「神」。
ある時は、普通の中年男性として、蕎麦屋に現れ、そこで会話もする。
また別の日は、逃がしてしまったセキセイインコを見つけて飼い主に届けたり
お弁当コンテストの審査員をしたり・・・・
なかなかチャーミング・・・^m^
人々の暮らしぶりも平和的で読んでいて楽しかった。
神って・・・案外、こういう風に存在しているのかも。
★★★★
発行年月:2020年1月
どこにでもいるんです。
一定の確率で必ず。
すべての働くひとに贈る、
新世紀最高“会社員”小説
社内でひそかにチャラ男と呼ばれる三芳部長。
彼のまわりの人びとが彼を語ることで見えてくる、
この世界と私たちの「現実(いま)」。
チャラ男は、なぜ、
――あまねく存在するのか?
――憎らしく、愛おしいのか?
(講談社HPより)
確かに・・・・こんな人ならいると思う。
わたしが考えるチャラ男とは、ちょっと違っていたけれどね。
ジョルジュ食品の社内の人々をそれぞれ語り手を変えながら進む物語。
チャラ男と呼ばれているのは、部長の三芳道造(44歳)。
妻が社長・穂積典明(69歳)の親戚にあたるため、縁故入社。
特に努力することなく、なんとなくうまく世の中、渡っていく人。
まあ、ぞこそこ頭は良くて顔もいいし、性格も悪くはない。
が・・・切れやすく、自己中心的。
奥さんは年上で会社を自ら経営している。
別れた夫の間に息子がいてそれぞれ独立している。
妻が彼を結婚相手にした理由は「ほぼ見た目」というのがユニーク。
中身は薄っぺらとちゃんとわかっているのがいい!(笑)。
社員の面々も、それぞれ特徴あってなかなかユニーク。
最初に登場の営業の岡野繁夫(32歳)は実直そうだなと思ったら、
最後で会社を興していて、よし!と思った。
一緒に会社をやるのが、一時は過労でメンタルを病んで休職していたが復帰した
伊藤雪菜(30歳)というのもいい!
二人ならいいパートナーになれそう♪
なかなか面白かった!
★★★
発行年月:2019年1月
夫を熊谷に残し、札幌へ単身赴任した沙和子。二人は次第にすれ違い、離別へと向かったが、新たに仕切り直した生活は、二人を思わぬ場所に導いて――新たな夫婦像を描く傑作長編。
(河出書房新社HPより)
大学時代の友人関係だった夫婦。
高之と沙和子。
沙和子はキャリアウーマンで単身赴任で北海道へ。
実家の両親と暮らす夫の高之の生活はそのまま。
離れて暮らすことで、少しずつ変わってゆく気持ち。
婚姻を続ける理由がないと言いだすのは、夫の高之。
中等度の鬱と診断され、治療中の高之だけど、少しずつ外に出て行動する
ことも出来るようになって来て一人でやっていく自信が出て来たのかな?
夫婦の12年間を追う形の物語で、時が経ち、二人の生活が変わって行く
様子がわかる。
離婚しちゃうんだけど、別れてもふとした瞬間に相手のことを思い出す。
どうしているかな?とも思う。
そして、再会。
夫婦じゃなくなっても、こんな風に会えば自然体で楽しく会話できる
関係って良いなと思う。
2人は夫婦じゃなけど、お互いを必要としているかんじ。
一緒にいなくても、こんな相手がいたら、前を向いて生きられそう。
双極性障害の既往がある著者ならではの、鬱の人の思考。
なかなか興味深かった。
素敵な物語だったと思う。
★★★★
発行年月:2016年1月
さえない52歳の非常勤講師小松とネトゲに熱中する飲み友達のサラリーマン宇佐美。小松に訪れた人生最後(かもしれない!?)恋に、宇佐美は奮闘するのだが……「完全恋愛小説」の誕生!
ーー「小松さん、なんかいいことあった?」
52歳の非常勤講師小松の恋と、
彼を見守るネトゲに夢中の年下敏腕サラリーマン宇佐美の憂鬱
52歳の非常勤講師小松は、新潟に向かう新幹線で知り合った同い年の女性みどりが気になっているが、恋愛と無縁に生きてきた彼は、この先どう詰めればいいか分からない。一方、みどりは自身の仕事を小松に打ち明けるかべきか悩んでいた。彼女は入院患者に有料で訪問サービスをする「見舞い屋」だったのだ。小松は年下の呑み友だち宇佐美に見守られ、緩やかに彼女との距離を縮めていくのだか、そこに「見舞い屋」を仕切るいかがわしい男・八重樫が現れて……絲山秋子が贈る、小さな奇蹟の物語。
(河出書房新社HPより)
<小松とうさちゃん>
うさちゃんは、小松の通う居酒屋の常連客宇佐美。
小松が52歳でそれよりは少し若いのかな?
40代で、妻子あり、ネットゲームにハマっている。
ネットゲームって知らないけど、こんな風に四六時中気になるものなのか?
そんな様子も面白かったけど、
小松と宇佐美の関係が、お互い深入りせずほどほどの距離を保った親しさで
なんか羨ましい関係。
そして独身小松に恋バナ。
同い年の長崎みどりとの出会いから、付き合い始め、結婚するかも?という関係に
移行する過程が微笑ましい。
中年のカップルなのに、ちょっと初々しさがあって、いい。
そして二人を見守る宇佐美。
なんと、宇佐美とみどりに驚きの事実!
みどりもネットゲームで宇佐美と一緒にゲームしてたとは~^m^
まあ、楽しいお話でした。
もう1篇短いお話<ネクトンについて考えても意味がない>
なんじゃこのタイトル?と思ったけれど、
なかなか哲学的な話でした。
ミズクラゲと60歳の女性が精神で海の中で会話する物語。
海の情景が浮かんで来そうで、ミズクラゲのいう言葉がいい。
ネクトンは水に逆らって自力で泳ぐことが出来る、イルカや大人の魚たちのことらしい。
そしてミズクラゲは自分から泳ごうとしないから、プランクトンなんだと。
クラゲのなかには死なないものもいるけれど、精神があって死なないのは辛い。
彼らには精神がないのが救いだと。
なるほどね・・・確かに、ずっと死ねないのも苦痛だろうなぁ~。
生きてるって楽しいことばかりじゃないから・・・
寿命で死ねたらそれは幸せなことなんだろうなぁ~。
絲山さんの書く文章は、やはりいいな。
★★★★★
発行年月:2015年12月
境界とはなにか、よそ者とは誰か――。土地に寄り添い描かれる、迫真のドラマ。
地方都市に暮らす宇田川静生は、他者への深入りを避け日々をやり過ごしてきた。だが、高校時代の後輩女子・蜂須賀との再会や、東京から移住した木工職人・鹿谷さんとの交流を通し、徐々に考えを改めていく。そしてある日、決定的な事件が起き――。季節の移り変わりとともに揺れ動く主人公の内面。世間の本質を映し出す、共感必至の傑作長編。
(新潮社HPより)
タ
イトルから想像して、薄情な人が主人公かと思って、宇田川静生が
何かヒドイ仕打ちをするのかなぁ~?なんて思っていた。
主人公は、群馬県高崎在住。
神主見習いで叔父の神社を手伝い、夏は北海道のキャベツの収穫を仕事にしている。
高校時代の女友だち・蜂須賀と再会。
蜂須賀は名古屋大を卒業後、名古屋の企業に就職したという。
そして木工職人の鹿谷の工房に通い、親交を深めていた。
鹿谷には東京に妻子がいる。
蜂須賀と鹿谷との関係がアッサリ崩れる事が起きたときには、唖然。
静生はショックだろうな。
恋人関係になったように思えた吉田瑞穂との別れもあったりして・・・
なんだか可哀想になった。
あてもなく車で走るうち、みつけた高校生・カズシとの出会い。
ヒッチハイクには不向きな場所で行き先を書いた紙を掲げるカズシの元に
わざわざ車を止めて徒歩で声を掛けに戻るなんて、良い人じゃん!!と感動した。
カズシとのやり取りほんわかした。
ま、あっけなく別れたけど・・・。
薄情というのとは、違うかな?
物語を読み終えて、表題の「薄情」の意味を考えるとなかなか深いなと思う。
あまり人間関係に深く悩むと辛くなる場合は、バッサリ忘れちゃうのも
いいんじゃないか?
宇田川には、また情を深められる相手が現れるといいな。
なかなか面白い話だったな~。
★★★★
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記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;