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読んだ本の感想あれこれ。
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発行年月:2004年10月

第30回川端康成文学賞受賞

指一本触れないまま、「あなた」を想い続けた12年間。
<現代の純愛小説>と絶讃された表題作、「アーリオ オーリオ」他1篇収録。注目の新鋭が贈る傑作短篇集。

選評より――
<袋小路の男>は純愛物語です。多くの作家が書こうとして、なかなか書けなかったテーマを、絲山秋子は達成しました。――小川国夫氏
大都会の真ん中で育った子供たち特有の、過度なまでの節度、孤立したとまどいと寡黙の出口のない切なさが、読者である私にも迫ってきた。――津島祐子氏

2005年本屋大賞 入賞作

                  (講談社HPより)



絲山さんの少し前の作品ですが、いいなぁ~この人の書く文章。

3編のお話ですが、
<袋小路の男>と<小田切孝の言い分>は、連作。

大谷日向子は高校生の時から、小田切孝に思いを寄せている。
しかし、二人は指一本触れることなく、お互い別の人と付き合ったり、別れたり・・・。

小田切は、女性にモテルタイプ。
ぶっきら棒な物言いなのに、たまに気を遣った風な態度をしてみせたり。
高校生の時からちょっと不良ぶっているし。
小田切は、作家を目指し、定職には、就かず高校生の時入り浸っていた
「エグジット・ミュージック」でバイトしている。

成人し、日向子は社会人になり、一旦、東京を離れて大阪に暮らすが
東京に度々帰り、小田切孝に会う。

2人の会話が面白い。
日向子は高校生の時から、年上の小田切には敬語。
小田切は常に上から目線の話し方。
乱暴な言い方でもそこに二人じゃなければ、わからない通じ合うものがあるかんじ。

<袋小路の男>の方は日向子目線の物語で、小田切のことなんか諦めればいいのに・・・
なんて思ったりもしたけれど・・・
<小田切孝の言い分>を読むと、小田切は日向子に心を許してるかんじだなと
思い、二人は男女の関係に今更ならないのかもしれないけれど
男女の友情が成立している二人の関係は、貴重だ!と思った。
正しく純愛!!
ラストは二人らしい。



もう1編の<アーリオ オーリオ>も良かった!
独身の40近い男・哲とその姪の中学3年生・美由の関係がほのぼの。
メール交換しようと言う美由に「手紙ならいいよ」と二人の文通が始まる。
何日か後に、既に過去になった気持ちが届くって面白い。


読みながら、ちょっと哲と孝って似てるな・・・・なんて思った。
理解しずらい男たちだけど、良い人。


絲山さんの本、他にも未読のもの読んでみよう!


                         ★★★★★

 
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発行年月:2015年5月

自分を見つめ直す二人の物語

人生の夏休みの物語。
わたしにはこの暮らしが合っていると思っていた──。
都会で働く上昇志向の姉と田舎で結婚間近のマイペースな妹。
生活を交換した二人が最後に選ぶ道は?

仕事、恋愛、結婚……
すべて正反対の二人が気付いた本当の気持ち。
東京の製菓メーカーで企画職として働いていた29歳の聡美(さとみ)が久しぶりに故郷に帰ってきた。実家を出たことがなくずっと田舎暮らしの3つ下の妹・愛美(まなみ)は、この機会に姉の家で都会の暮らしを楽しんでみたいと思い立つ。部屋を貸すことを嫌がる姉や困惑する婚約者を説き伏せて、愛美は東京に発つが、聡美の家で姉の恋人と遭遇。プライドが高く向上心の強い姉の突然の帰省を訝(いぶか)しんでいた愛美は彼に探りを入れてみることに。聡美が実家に帰ってきた本当の理由とは──?

                  (祥伝社HPより)



3つ違いの聡美と愛美。
東京で暮らしていた姉が1年ぶりで突然、帰省。
両親は、驚きつつも喜び、慌ててご馳走を用意する。
妹の愛美は実家から出たことがなく、地元の幼馴染の公太との結婚が決まっている。

愛美は、姉の暮らしを暫く味わいたいと東京の姉の部屋に暫く居させてと頼み
渋々承諾した聡美。
上京し、姉の部屋に行くと、そこには見知らぬ男性。
聡美の恋人・柏木だった。


お互いの恋人と過ごす時間を持つことになる姉妹。
最初は、お互いの恋人を「ちょっと苦手」と感じながらも、次第に相手の良いところを
発見する。

公太は読みながら、この子は素直で良い子だなぁ~と思ったけれど
柏木に対しては「ちょっと怪しい?」なんて思ってしまった^^;

でも結局、公太も柏木も思いやりのある素敵な人で良かった。


姉妹って言いたいことを言って喧嘩になることはあっても、深いところで信頼出来て
いるから頼りにもなる存在。
こんな姉妹だったら、いいなぁ~。

柏木の「どうせ家族になるんだから」発言は、聡美に対するポロポーズとも
言える言葉で、嬉しかった♪

姉妹夫婦仲良く付き合っていってくれたらいいな。
なんて娘をふたり持つ、わたしは母親目線で、ほんわかした気分になりました(^^)


                           ★★★

 



発行年月:2015年2月


 米崎県警平井中央署生活安全課が被害届の受理を引き延ばし、慰安旅行に出かけた末に、ストーカー殺人を未然に防げなかったと、新聞にスクープされた。県警広報広聴課で働いて4年、森口泉は、嫌な予感が頭から離れない。親友の新聞記者、千佳が漏らしたのか? 「お願い、信じて」そして、千佳は殺された――。県警広報課事務の私に、何ができる? 大藪春彦賞作家、異色の警察小説。

                     (徳間書店HPより)



ラストに向かうまでの過程は面白かった。
事件の真相を追うのは、親友の不可解な死の真実を突き止めるため独自に捜査する
警察事務員の森口泉。
泉と同期の警察官・磯川も捜査協力。

事件の背景に浮かんでくる、ある宗教団体の存在。
警察組織の闇の部分。
組織を守ることが最優先という姿勢に腹が立つ。

最後に泉は決断する。
警察官になろう!と。
事務職員では直接、犯罪捜査に関与出来ないから。
その志を応援する磯川。
2人の間には、強い信頼関係が生まれた。


これ、続編ないかなぁ~?
泉が警察官となり、磯川と犯罪捜査する話、読んでみたいなぁ~。

表題の「サクラ」は、花の桜じゃなかったんですね。
読んで意味がわかりました。


読みやすくてなかなか面白かった!


                             ★★★



発行年月:2014年12月


 「握っていなければならぬ貴重な手がふと離れてしまうとき、あたりにたちこめるとりとめのない時間は、甘美な苛酷さへとまがまがしく変容する。その一瞬に立ちあった者の心の乱れは、容易にはおさまるまい。『九年前の祈り』は傑作である。」─蓮實重彦氏絶賛!!幼い息子をつれて海辺の小さな集落に戻ってきたシングルマザーのさなえ。痛みと優しさが胸を衝く〈母と子〉の物語。

                    (講談社HPより)



2014年下半期の芥川賞受賞作ですね。
長編かな?と思って居たら・・・・4つのお話で・・・「あれ?短編集?」と
思いながら読み進むと、これはやはりひとつのお話なんじゃないかな?と
思えたちょっと不思議な構成の小説でした。

最初は、表題作の「九年前の祈り」
主人公の安藤きみえ(35歳)は、東京から実家のある大分県のとある海辺の集落に
息子の希敏(ケビン4歳)と共に帰ってくる。
元旦那は、カナダ人。

実家の母親から、元旦那と知り合ったキッカケになったカナダ旅行に一緒に行った
渡辺ミツ(みっちゃん姉)の息子が重い病気で入院中と聞く。
きみえには、忘れられない情景があり、それはカナダの教会でみっちゃん姉が
祈っていた姿。結構何かを長い時間かけて祈っていたその姿をきみえは今も
深く心に留めている。
ほかにも幾つか、みっちゃん姉の言葉を思い出す。
そんなみっちゃん姉の息子さんのお見舞いにケビンと共に出かける。
ケビンは時々、手が付けられないほどの癇癪を起こし周りの大人たちを困らせる。


次の話は<ウミガメの夜>
大学生たちが旅行中、浜辺で3人ウミガメの産卵を眺めている。
大分県は大学生のうちの一人の故郷。
一人は入院中の母親のことが心にあり、祖父とも以前、ウミガメの産卵を見にきた
ことを思い出す。


<お見舞い>
昔から憧れていた日高誠(マコ兄)。
東京の大学に進学し、卒業後、地元に戻り役所勤務をしていたけれど
10年前くらいから体調を崩し、その様子が気になる首藤寿哉(トシ)。

海辺に居た見知らぬ大学生3人が借りていたレンタカーが動かなくなったと
困っていると聞き、なかの一人が病気で入院中の母親の容態が悪くなったので
東京に戻らなきゃならないと聞き、車で空港まで送る。

兄によく虐められていたトシがちょっと虐めた、幼なじみが入院している
大学病院へ今度はマコ兄と一緒に見舞いに行こうと大学生たちを車に乗せながら
考えるトシ。


<悪の花>
千代子は、渡辺ミツの息子のことを思う。
ヘルパーとして働くミツの息子とは、老人たちが集まる、ふれあいサロンで知り合った。
自分の代わりに墓参りにも行ってくれて、そこに咲く繁茂する悪の花を取ってくれた。
ミツの息子が入院したと聞き、悪の花を取らせたのがいけなかったんじゃないか?と
申し訳なく思う。


読みながら、この話のこの人は、この話のこの人と同一人物?
などと考えながら読みました。
同じ集落の人たちの物語で、抱えている病がそれぞれの人たちを悩ませている。
けれど、九年前のミツの祈りは、それぞれの人たちを不思議な糸で結び
やがて、何かしら救いの手が差し伸べられる?

さなえの息子・ケビンもこの集落に呼び寄せられた?
救いの手に引き寄せられて?

なんて、勝手な自己解釈かな?

小野正嗣さんの本は、以前「マイクロバス」を読んで、何か暗く重い
けれど、不思議な魅力を感じ読み終えた後、余韻が残るような話だと記憶していますが
これも似たような印象でした。

ほかの本も読んでみよう!


                         ★★★★



発行年月:2015年4月


 文久三年、天皇の攘夷親征の先鋒隊となるべく、
公家・中山忠光は志士たちを率いて奈良へと向かった。
維新には早すぎた「天誅組」の光跡を描く、書き下ろし歴史長篇。

                    (中央公論新社HPより)




幕末の人物には有名どころが揃っていて・・・

主人公の「中山忠光」と聞いても「?」という感じでした^^;。
明治天皇の叔父にあたる人物なんですね。
姉が帝の子ども・祐宮を産み、幼い祐宮が大人になったときの世の中を案じて
討幕に向かった男。


やや無謀とも思われた挙兵で、最初に攻めた代官所は焼き払い、五条新政府を
開き勢いに乗り、以後「天誅組」と名乗るが、その後は厳しい幕府側との戦いとなる。
次々に仲間を失い、それでも次の世を作るという目的の為、生き延びることを
選ぶ忠光。

片腕となり時には意見が分かれ激しい喧嘩になった吉村虎太郎の最期を想像させる
場面は切なかった(/_;)。


結果的に忠光は、自らは何も大きな働きをしないまま命を落とした。
無念だっただろうな~。

でも、その後、結果的には幕府は倒され明治政府が発足。
忠光が望んだ世の中に変わった。

忠光が事を起こす必要はなかったんじゃないか?と単純に思ってしまうけれど
こんな働きをした人物が居たと言うことが、わかって良かった!

小説なので、多少の作り事はあるのかもしれないけれど
今回も大いに勉強になりました。

NHK大河ドラマの花燃ゆもこういう時代の若者たちの話なので
ドラマを見ながら、この小説のこともまた思い出すでしょう。


                         ★★★★★
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台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪

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